大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成12年(ネ)2704号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す

2  被控訴人は、控訴人に対し、一億五〇〇〇万円及びこれに対する平成一一年二月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  事案の概要

1  本件は、主債務者の債務を弁済した連帯保証人である控訴人が他の連帯保証人である被控訴人に対して求償権の行使として求償金の一部の支払を求める訴訟である。

原審は控訴人の請求を棄却したため、控訴人が控訴した。

2  争いのない事実及び争点

次に当事者の主張を加えるほかは、原判決「事実及び理由」の第二、一及び二(一丁裏六行目から四丁表八行目まで)のとおりであるので、これを引用する。ただし、二丁表七行目<編注本誌一五六頁三段一八行目>の「平成三年九月三〇日」を「平成九年九月三〇日」に改め、同一〇行目<同一五六頁三段二三行目>の「原告及び被告は、」の次に「平成五年九月三〇日、」を、同一二行目<同一五六頁三段二七行目>の「原告は、」の次に「平成九年一二月一九日までに、」を、二丁裏一一行目<同一五六頁四段一六行目>の「全く」の次に「その支払を」を加える。

(控訴人の主張)

(一) 主債務者が確定的に債務の弁済又は連帯保証人に対する償還ができない場合において、債権者と複数の連帯保証人とが、連帯保証人がそれぞれ債権者に債務を支払い、債権者がその余の連帯保証債務を免除する合意をしたときは、右合意によって連帯保証人が負担すべき債務の額が定められたから、民法四六五条一項が規定する保証人の負担部分の額は、右合意で定められた金額を基準にして定めるべきである。

(二) 債権者伊藤忠商事株式会社(以下「伊藤忠」という。)は、主債務者ヘルス・ケア株式会社から債務の一部の弁済を受け、連帯保証人控訴人から一二億七六五二万五五一二円、同被控訴人から二〇〇〇万円の弁済を受け、その余の債権を放棄したから、主債務の額は、一二億九六五二万五五一二円である。したがって、控訴人は、被控訴人に対し、右金額の二分の一から被控訴人の負担分二〇〇〇万円を控除した後の金員を求償することができる。

(被控訴人の主張)

民法四六五条一項に規定する負担部分は、当初の債権の額を基準にして決定され、後に債権者が債権の一部を放棄したとしても、負担部分が変更されるものではない。

三  当裁判所の判断

1  当裁判所も、控訴人の請求を棄却すべきものと判断する。その理由は、次頁に控訴人の主張に対する判断を加えるほかは、原判決「事実及び理由」の第三、一(四丁表一〇行目から六丁表二行目まで)のとおりであるので、これを引用する。ただし、四丁裏三行目<編注 本誌一五七頁二段二六行目>から四行目<同一五七頁二段二七行目>にかけての「負担すべきものしている」を「負担すべきものとしている」に、同九行目<同一五七頁三段二行目>の「民法四五六条一項」を「民法四五六条」に改める。

2  控訴人は、主債務者が債務の一部を弁済し、又は債権者が債権の一部を放棄した場合には、弁済又は放棄の後の債権(当初の債権から弁済額及び放棄の額を控除したもの)を基準にして民法四六五条一項の負担部分を決定すべきであると主張する。

民法四六五条一項は、数人の保証人のうち一人の保証人が負担部分を超える額を弁済した場合、その保証人は他の保証人に対して求償することができる旨規定する。右規定は、本来は、保証人が保証債務を弁済した場合、主債務者に求償すべきであるが、主債務者の資力が十分でないときに、右弁済をした保証人だけが損失を負担しなければならないことになり、共同保証人間に不公平が生ずるため、負担部分を超える部分について他の保証人に対する求償を認めたものである。そして、負担部分を超える部分についてのみ求償を認めたのは、負担部分は、保証人の本来負っている義務であるから、この部分について他の保証人に対する求償を認めるのは相当でないことによる。また、他の保証人に対する求償は、主債務者の無資力を要件とするものではなく、求償に基づき償還した他の保証人は、主債務者に求償することができる。右に述べた民法四六五条一項の趣旨等に基づいて考えると、保証人が自己の負担部分を超える額を弁済したかどうかは、当該弁済の時における主たる債務の額を基準として判断するのが最も公平であり、相当であると解される。その後の主たる債務の弁済や免除等の偶然の事情によって共同保証人間の求償権の行使の可否や求償権の範囲を定めるのは、法的安定性を害するものであり、相当ではない。

甲第五号証の一、二によれば、控訴人の伊藤忠への連帯保証債務の履行としての弁済は平成九年六月三〇日(五三九九万八八四五円)及び同年一二月一九日(一二億二二五二万六六六七円)にされていることが認められるところ、同年九月三〇日現在の主たる債務の額が一三七億〇四一六万四五二三円であることは当事者間に争いがなく、甲第二五号証によれば、伊藤忠による七一億三九六一万七五一五円の債権放棄がされたのは平成一〇年三月三〇日であることが認められるから、控訴人が最初に弁済をした平成九年六月三〇日当時の主たる債務の額は、一三七億五〇〇〇万円程度であったものと推測される。

以上の説示によると、控訴人は、自己の負担部分を超えて債務を弁済しているとはいえないから、被控訴人に対し、求償権を行使することができない。

四  よって、原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 矢崎秀一 裁判官 原田敏章 裁判官 春日通良)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!